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血塗られた宮廷で護衛騎士は愛に揺れる
血塗られた宮廷で護衛騎士は愛に揺れる
ผู้แต่ง: あさじなぎ

1 美しい皇帝

ผู้เขียน: あさじなぎ
last update วันที่เผยแพร่: 2026-01-07 12:51:45

美しい皇帝のもとで、ひそかに血と陰謀にまみれた事件が起きていた。

ここは、龍虎帝国の宮殿内にある女官たちの寮。

私、雪華シュエファが蒼龍《ツァロン》皇太子とその部屋に入ったとき、まず目に飛び込んだのは床に転がる血まみれの死体だった。

年配の女官は腹を大きく切られているらしく、そこから流れ出た大量の血が、床に血だまりを作っている。

虚空を見つめる瞳には、すでに光がない。

室内に漂う濃い血の匂い。

死体を見て、私は思わずぶるっと震えた。

「シュエファさん……壁を」

若き皇太子殿下の怯えたような声を聞き、私は顔を上げて壁を見た。

白い壁に書かれた血の文字。

被害者の血、だろうか。赤黒く変色した血で、こう書かれていた。

『次は、お前だ』

それは警告だろう。お前が誰を指すのか。そんなのひとりしかいないだろう。

何せ殺された女官は皇太子殿下に仕えている女官だから。

「また僕のせいで……」

皇太子殿下の悲痛な呟きが聞こえてくる。

宮殿内で起きた二度目の殺人。

狙いが皇太子殿下なのは確かなようだ。

それが始まったのはずっと以前からだろう。

今から十二年前――

街は華やかに飾られて、色んな色の服を着た女性たちが歩いてる。

今日は新年。

帝都では、宮殿で新年の一般参賀、っていうのが開かれる。

「シュエファ、はぐれないようにね」

お母様が、私の身体をそっと引き寄せる。

十歳の私には周りの人皆大きくて、埋まってしまいそうだった。

だから私はぎゅってお母様にしがみつく。

私もお母様も、姉妹たちも皆着飾って宮殿へと向かう。

紅の上衣に、薄紅のスカート。お母様が私の髪を結ってくれて、つまみ細工のお花のかんざしをつけてくれた。

皆がおしゃれ、する理由は新年のお祝いで皇帝陛下がおでましになるからだって

私がこの一般参賀に参加するのは初めてだった。

だから今、すっごくドキドキしてるの。皇帝陛下、どんな方なんだろう。

綺麗な皇帝陛下。偉大な皇帝陛下って皆呼んでるから、私、すっごく楽しみなんだ。

私はわくわくしながらお母様たちと一緒に一般参賀の列に並ぶ。

周りにいるのは大人の女性ばかりだった。だからかな、すっごくいい匂いがした。

だってこの国、女の人ばっかりなんだもの。

だからお父様はひとりだけど、お母様はたくさんいるんだ。

男の人がすっごく少ないから。

皇帝陛下は男だ。奥さんがたくさんいるんだって聞いた。でも男の子が生まれたらもう、奥さんを増やせないんだって。

変なの。女の人たくさんいるんだから、いっぱい奥さん、迎えたらいいのに。

「陛下は女遊びが酷いらしいわねぇ」

「知ってる? 孔《こう》家の女性が皇帝のお手付きになって子供産んだって噂」

「あれ、夏《か》家のだと聞いたけど?」

なんて話が聞こえてくる。

何の話してるのか分かんなくって、私は変に思いながらお母様に張り付いていた。

列はどんどん進んで行って、宮殿内へと入っていく。

宮殿の広場には、たくさんの人たちがいた。

赤い壁の大きな建物に、大きなバルコニーがついているのが見える。

あそこに陛下が現れるのかな。きれいな服着た人が、なんか控えているみたいだ。

広場に立って、私たちはその時を待った。

「きゃー!」

っていう、悲鳴が響く。

宮殿の上に龍がいる。青く輝く鱗を持つ龍が。

「あ……」

すごい。

青龍は、宮殿の上に浮かんでこちらをじっと見下ろしていた。

そしてバルコニーにたつ人影を見つける。

白い、大きな虎を連れたその人は、黒い上衣をまとっていて、すごく……綺麗だった。

あの人が皇帝。

すごい。

陛下がでてきたら皆、しーん、て静まり返ってる。

「今年も新年を迎えられ、皆には感謝申し上げる」

凛とした声が、広場に響いた。

すごい広いのに、すごく声、聞こえてくる。

あの人が皇帝陛下。

私は呆然と、そのきれいな姿をじっと見つめていた。

成長して実感しけど、あれはひと目ぼれだった。

だから私は皇帝陛下のおそばに仕えようと勉強をし、訓練に励み、二十歳で国のエリートである女ばかりの紅龍騎士団に入団。

二十二歳になった今、第二師団の団長にまでなった。

隣国、カルトゥールとの数年に一度起きている小競り合い終えた私たちは、半年ぶりに美しい首都、紫雲に帰る。

「お帰りなさい!」

「帝国の誇り!」

という、民の声が私たちを出迎えてくれた。

今日のために、私たちは鎧を磨き、皇帝陛下からは真新しい外套をいただいた。

それをまとい、我が第二師団と第三師団は、紫雲の大通りを歩く。

風が吹くと、外套の裾がたなびき壮大な雰囲気を醸し出す。

騎士団は、私を含めてほとんどが女性。

そして私たちを出迎える民も女性ばかりだ。

女性が国を支え、女性が国を守るために戦う。

美しいこの国を、皇帝を守るのは私たちにとって誇りだった。

人々の歓声を浴び、私たちは宮殿へと入城する。

幼い日、バルコニーに立つ皇帝陛下を拝見した広場に整列し、私たちは待った。

「皇帝陛下のお成りです」

という、年配の女官の声が響く。

すると、黒に金色の龍が刺繍された外衣をまとった皇帝陛下が、広場へとお出ましになる。

ザッ。

と、一斉に騎士団の者が頭を下げる音が響く。

私ももちろん、みなと同じように陛下へと頭を下げた。

「頭を上げよ」

凛、と広場に響く声に、私たちは同時に頭を上げる。

あの日、遠くから見ただけの皇帝陛下が、今、とても近くにおられる。

私は胸の高鳴りを覚えつつ、じっと陛下を見つめた。

太陽に照らされて輝く黒い髪。鋭い眼光が私たちを見つめている。

もう四十だというのに、皇帝陛下は今も変わらず威厳と美しさを兼ね備えている。

「第二師団、第三師団の騎士たちよ、ご苦労だった。カルトゥールを見事退けてくれたおかげで、しばらくは平穏になるだろう」

そうであってほしい。

でなければ私たちの犠牲が報われないから。

「皆、疲れただろう。ゆっくり休むがよい」

その言葉を聞いて私たちは再び、深く陛下に頭を下げた。

皇帝陛下が立ち去る音だけが響く。

足音が消えたとき、私たちは身体の力がすっと抜けた。

「そうしたらシュエファ」

第三師団の団長が私に声をかけてくる。

「そうね。皆、ご苦労だった。帰ってゆっくりしてくれ」

全員に聞こえるよう、私は声を張り上げる。

「皇帝陛下から皆様へ褒美がございますので、あちらへどうぞ。この者がご案内いたします」

女官の言葉に、皆が歓声を上げる。

「褒美ですって」

「何かしら」

戦場では虎と龍と恐れられる私たちだが、日常に戻ればひとりの女だ。

褒美、と聞けば期待するのは当たり前だった。

「ホ団長!」

女官が私を呼び、こちらへ来るようにと手で合図を送ってくる。

私は、走りだしたい衝動を抑え、ゆっくりと歩いて彼女に近づいた。

「お呼びでしょうか」

「陛下が、団長をお呼びでございます。こちらへ」

淡々と告げる女官は、私に背を向けて歩き出す。

私は彼女の後を追いかける。

陛下が私を呼んでくださっている。

そう思うと顔がほころびそうになる。体温が上がり、足取りも軽く感じてきた。

沸き上る衝動を抑えつけて、私は宮殿内へと入っていった。

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